【ハンターの手記02】元の世界に戻るまで

♠話の続きだが……って おい、新米ハンター

眠っているんじゃあないだろうな。

さて、もう少し付き合ってもらうぜ。


♣元の世界に戻りたい。

この世界に迷い込み、動物や同じハンターたちと出会い、ハンター協会を立ち上げて、そこで更にたくさんの動物や新たなハンターと出会い……。

充実してきた暮らしの中でふと思った。

戻りたい、というか戻らなければならない、と。

妻を残し この世界に来てから、とうに1年は過ぎていた。

そんなとき、ハンター協会を訪ねてきた動物がいた。

忘れもしない、俺が初めてこの世界に来たとき声をかけてくれたタヌキだった。

彼は全てを悟ったような目で俺に言うんだ。

「戻るかい? 」ってね。

うなずいた俺は、タヌキと一緒に彼の住処だった森へ向かったんだ。

タヌキは、彼の家の奥の古びた扉の前で立ち止まる。

そして彼は「ありがとう」って言うんだ。

まさかそんなことを言われるなんて思ってもいなかった。

この世界に来てから、元の世界にいる俺たちのようなハンターが動物にとってどんな存在か、嫌というほど考えされられた。

それでもこいつらは、俺たちを対等な生命として接してくれた。

こっちこそ感謝してもしきれないくらいなのに……。


♥「このまま戻っていいのだろうか。」

帰りたいから連れてきてもらったのに、俺はそんなことを言ってしまったんだ。

ハンター協会は、関わったみんなは、この世界でどうしていくのか。

俺だけ何事もなかったかのように帰っていいのか。

そして 俺たちは なぜここに来たのか、それもまだわかっていない!

タヌキは俺の話を黙って聞いたあと、1枚のカードを俺にくれた。

なんだか古びたカードで、動物らしき絵が書かれた小さなカードだ。

そして彼は語り始めた。

君がここに来た意味は、元の世界に戻ったらわかるはずだ。

そして、もし君が もう一度私たちに会いたいと望むのならば、その時は このカードに願ってくれ、と。

またタヌキやみんなに会えるかも知れないと思った俺は、少しほっとした。

そして、元の世界に戻ろうと、改めて心に決めたんだ。


♦「またな。」

タヌキに挨拶をしたあと、もらったカードを胸ポケットに入れて、俺は目の前の扉を開けた……。

見覚えのある場所で目を覚ました。

そう、ハンティングしていた場所に戻っていたんだ。

どうやら元の世界に戻ったのは本当らしい。

すぐに家に帰った俺を迎えてくれたのは、愛する妻だった。

良かったと思った反面、彼女には本当に申し訳ないことをしたという気持ちが湧き上がった。

1年もほったらかしにしていたんだ、どんな言葉をかけられるのだろうか、と不安になった俺に彼女はこういうんだ。

「もう帰ってきたの?」

そりゃあないぜ!待っていてくれたんじゃあなかったのかよ!

だが、どこかおかしい。

部屋を見たら、不思議なことにカレンダーが進んでいない。

あの日と同じだ。向こうの世界で1年ほど経っていたはずなのに、元の世界の時間は進んでいなかったんだ。

そうか、長い夢だったんだ。

夢? 夢だったのか?

俺はタヌキの言葉を思い出す。そして、胸ポケットを探ったら、古びたカードが確かに入っていた。

夢じゃなかったんだ。

こうして俺は元の生活に戻った。

で、なぜ今 俺がここにいるのか?

はっはっは、そんなのハンター協会の代表だからに決まってるだろう。

……それじゃ説明になってないって?

まあまあ、そう焦るなよ。

おっと、コーヒーのおかわりはセルフサービスだからな。


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