【ハンターの手記01】ハンター協会設立

♠調子はどうだい? 新米ハンター。

俺からの【手紙】は読んでくれたかい?

 

それじゃあ改めて…。

俺はハンター協会の代表、コーリーだ。

 

そもそもハンター協会って何だって? 確かに、話していなかったな。

じゃあ今日は少し俺の昔話に付き合ってくれよ。

 


♣元の世界でハンティング中だった俺は、この世界に迷い込んだ。

 

ハッキリ覚えているよ。

遊びで動物を狩っている真っ最中に目の前が真っ暗になったんだ。

そして気づいたら、この街にいた。

 

 

そりゃあ戸惑ったさ。でも困った俺を見て、優しく声をかけてくれた動物がいたんだ。

動物が歩いているだけでも驚きなのに、猟銃を持ったヒトに怯えることもなく話しかけてくるんだぜ?

 

俺に声をかけてくれた そいつはタヌキだった。

森の小さな小屋で暮らしていたんだ。

俺は彼のもとに住まわせてもらいながら、この世界を見て回った。

 

彼と話したり街を見たりしているうちに、この世界じゃ「ヒト」「ドウブツ」なんて括りはない、そう実感していった。

そして動物たちも自分たちの力で生活をしていることを知った。

ワニはパワーを活かして力仕事をしているし、賢いフクロウは学者をしている。

とある会社の代表取締役はゾウで、街じゃOLのウサギが働いているんだ。

 

……じゃあ俺たちヒトは何をすべきだろうか?

 


♥あるとき俺は、自分以外にもこの世界にヒトがいることを知ったんだ。

 

実はこの世界に迷い込んだのは、俺だけじゃなかった。ハンターは沢山いたんだよ。

そしてそいつらと会うこともできた。

 

そこでまたひとつ、驚いたことがあった。

なんと全員が、俺と同じように元の世界でハンターだったんだ。

それが、どういうワケか みんながみんなハンティング中に この世界に迷い込んできたっていうんだぜ。

 

こんな偶然ってあるかよ? ないよな?

ってことは、偶然じゃあ ねえんだ。

 

 

話を聞いたら、見たこともない世界に迷い込んだ俺たちハンターはみんな、動物たちの助けによって支えられていたんだ。

動物を狩ることを遊びとしていた俺たちハンターに、動物たちは手助けをしてくれた。俺たちを咎めることすらなかったんだ。

 

俺もみんなも、長い長い夢だと信じていた時期もあったが、どうにもこれが現実なんだよな。

みんな家族や友達を残してここに迷い込んでいる。

だけど、不思議と元の世界に戻りたいとは誰も言わなかった。

 

それはなぜか?

俺たちがここに来た理由……それが知りたかったんだ。

そのためには、何をしなければならないかを考えるようになった。

 

俺だって、いつまでもタヌキの優しさに甘えていちゃいけない。

ヒトも動物も関係なく生きていける街だとわかった以上、何かしなくちゃいけないだろう。

自分が生きていくだけでなく、誰のために何ができるか。

 

こうして俺が代表となり、俺たちハンターの手でハンター協会は設立された。

 

 


♦結局 ハンター協会って何だ、って?

 

カッコつけて長々と話してきたけど、要は街の便利屋みたいなもんだな。

ヒトとしての能力を使って動物の困り事を解決するのがハンター協会だ。

それぞれ元の世界でやっていた仕事のスキルを活かしたり、ヒトが得意な細かい作業や、知識を使った作業を請け負ったりするのさ。

 

はじめは知名度なんて全く無かったんだが、ある事件を解決したことをきっかけにハンター協会には毎日いろんな依頼が寄せられるようになった。

そして俺たちハンターは、一生懸命 目の前の依頼をこなした。

 

それは、この世界で生かしてくれた動物への感謝の気持ちはもちろんだけど、今までの自分が根本から変わってゆくような、そんな気がしたからだ。

それは決して悪い変化じゃない。なにか大事な、大事な変化だと思った。

 

 

俺たちは気づき始めていた。違いは無いんじゃないか、と。

あの日まで いたずらに奪い続けていた獲物の命も、愛犬のマックスの命も、偉大な親父の命も、可愛い娘の命も、そして愛しい妻の命も……。

 

じゃあ俺は、ひとつの生命として、何を思い、どうやって生きていこうか。

 

そう思ったとき、俺は元の世界に残してきた妻がどうしているのか、突然気になって仕方なくなったんだ。

 

……話が長くなったな。そうだ、何か飲むかい?

ハシビロコウから貰った旨いコーヒーがあるんだ。

 


【ハンターの手記02】元の世界に戻るまで