俺にとっては久しぶりだった家族との暮らしだった。今まで以上に家族との時間をとって、それは幸せに過ごした。 だが、もちろん変わったこともあった。猟銃はあの日から一度も使っていないということだ。 そしてタヌキが言っていた「俺がどうぶつの世界に行った意味」をふと考えていたんだ。 こっちでも、タヌキたちのような世界が作れないだろうか。どうぶつたちと手を取り合うことはできないか。 だけど「どうぶつを大事にしましょう」とはちょっと違う気がするし、そもそも俺が言っても説得力なんてない。
「どうぶつの世界でタヌキと暮らしていたんだ」
って、アタマがおかしいオヤジだと思われてお終いだしな。 それならば、自分のやり方でどうぶつたちと暮らせる世界を作ろう。そう思った俺は、あの古びたカードを見て閃いた。 俺たち人間が、遊びの中でどうぶつたちとの関係を改めて見直せないか、って。 それは押し付けじゃないし、正義を説こうなんて気も全くない。タヌキたちが俺たちにしてくれたみたいに、自然に。 こういう気持ちや考えって、自然に楽しく遊ぶ中で芽生えてくるものだと思うから。
あのあと、たまたま日本にいた俺は とあるクリエイターと出会い、彼にこのアイディアを伝えた。 全てを理解してくれた彼と共同で制作したのが「トラタヌ」というカードゲームなんだ。 ゲームが完成した俺は、久しぶりにあの古いカードを見て思った。「またあいつらに会いたいな」ってね。 そしたら不思議なことに、このどうぶつたちの世界に来ていたんだよ。 あの古いカードは ふたつの世界を行き来できるカギになっていたんだ。 戻った俺は真っ先にタヌキに会いに行った。そして、俺が自分の世界で作り上げたトラタヌをプレゼントしたんだ。 彼は最初からトラタヌの完成を待っていたかのように、それはそれは喜んでくれた。そしてこう言った。
「このゲームみたいに、ぼくらの世界でもパーティを開かないか?」ってね。